効率では身につかないものもある。

バレエに限らず、何でも、ですが、技術を身に着けようと思った場合、メカニズムに沿って身に着けていった方が、圧倒的に効率が良い事は確かです。

 

そして、メカニズムを理解した方が絶対に効率的です。昔ながらの「見て覚えなさい!」は確かに非効率です。そして「見て覚えなさい!」の場合、教える方も、どうしてそれが出来るようになったか、はっきりとわかっていない場合が多いです。

でも、ある一点において「見て覚えなさい!」は物凄く有用です。それは習う側が自分の頭で考える事を強制できる、ということです。目で見たものを自分が行うには、自分に説明できるように目で見たものを解析する必要があります。解析し覚えて実行しますが、大抵の場合、絶対に1回では無理です。なので、今度はなぜ出来なかったかを考え、修正し、また実行する。出来るまでこれを繰り返す訳です。この過程では、観察する力を伸ばす必要がありますし、根気も必要になります。何より、なぜ出来ないのか、とひたすらに考えては、こうかな?と思ったことをやってみて、という、トライ&エラーを繰り返しながら目標に近づく、という能力は何をやるにも、絶対に必須な能力でしょう。

 

私が思うに、人間がこの過程に取り組む為に絶対に必要なことは「謎」だと思います。どうして?どうして出来ないんだろう?どうすれば出来るのか?見えてないところに何があるの?と言った「謎」に対する「好奇心」が大切です。
ところがメカニズムが完璧に他者の手でつまびらかに見せられてしまうと、その「謎」がなくなってしまいます。あ~、こうできればこうなるのか、あ、そっかここが出来ないから、じゃあこれを出来るようにすればいいのか、となるのですが、これ、良い事だけじゃないんですね。そうすると、その問題をクリアするのにかかる労力と時間がある程度予測出来て、その結果のレベルもまあ読めるようになる。その状況で、問題をクリアするために努力を続けることは、大抵の人には苦痛でしかなく、その先に進みたければ四苦八苦するか、もしくは見切りをつけるか、になってしまいます。

 

ところが、人間というのは、計算通りにはいかない事もあるのです。どうすれば出来るようになるのか、トライ&エラーを繰り返し、結果予想もしていないレベルの能力を身に着ける事もあるのです。長い道のりですが、考えたくものない数の反復訓練を愚直に繰り返すことでしか身に着ける事が出来ない技術は確かにあり、また、その過程を経たからこそたどり着ける心の在り方というのも確かにあるのです。その道のりを支えるものは「興味」と「好奇心」、「好き」と「こうありたい」という「向上心」。何も真新しい事はないのです。

 

昔、イギリスで怪我をしたとき、リハビリの練習を教えてもらいました。1日何回くらいやればいいですか?と聞く私にDr.はちょっとかわいそうなものを見る目をして「何回でも。自分が出来るだけ。できるようになるまで繰り返して。」と言いました。そうなんですよね。リハビリの練習はそれを行う事が目的ではなく、その練習を通して怪我を回復して痛みがなくなり、再度の怪我をしなくなるのが目的なのですから、Dr.のいう通りなのです。その後、色々なエクササイズを組み合わせて、自分の身体と相談しながら、ただただ地道に繰り返す事5年近く。まったく痛みのない足首になる事が出来ました。効率がすべてではないこと、ただただ反復することでしかできない事もある事を本当に学んだ出来事でした。

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