子供たちがバレエから学べる事

コロナ禍が始まったばかりの時、「バレエを辞めた。これから先バレエやそのほかの舞台芸術を目指すのは無駄だから、賢い子はみんな辞めるだろう」というツイートを読み、すごくショックを受けました。

確かに、バレエやほかの舞台芸術は、生活に直結はしないものです。また、現在のウクライナのように本当に生命の危機に晒された生活の中ではやり続ける事は出来ないものの一つでしょう。

それでも、人間が希望をもって生きるためには、身体に食べ物で栄養をあげるように、心、精神にも栄養をあげる必要があるのではないでしょうか。

子供たちや大人の方のクラスを教え続ける中で、その思いは強くなりました。旅行も外食も躊躇われる期間、バレエのクラスに来て、動いて汗をかいて、笑って、お友達とお話して、これがあるから頑張れています、そう言っていただく度に、衣食住とは違うところで、バレエは人を支える事が出来るんだ、無駄なんかじゃない、と感じる事ができました。

 

そして、もう一つ、子供たちの成長の中で、大切な役割を果たすこともできるのではないか、と思うようになりました。

テクノロジーが発達し、ありとあらゆる余白が削り取られようとしています。

時間の余白、勉強の余白、仕事の余白、生活の余白。

すべてが効率で考えられ、すぐに成果に結びつかないものは邪魔、無駄と判断されてしまう。

スイッチ一つですべてが動き、待つという行為が減ってしまっています。

 

それ自体を否定はしません。私だってスイッチ一つでお湯が出る生活を捨てれるとは思いません。

ですが、そのような生活の中で、「待つ」という行為が苦手な子が増えてきているように感じます。

 

私たちの身体はアナログです。心、精神に至ってはアナログの極致というか、まったく計算通りには動くものではありません。

バレエの訓練は、何年もかけて成果を求めていきます。身体はアナログで、昨日できたことが今日もできるとは限りません。ストレッチ一つ取っても、昨日の最後に出来たところから今日が始められるわけではないのです。

一回できるようになっても、身体の感覚は毎日違ってしまいます。また、メンタルの調子にも左右されます。それを根気よく同じ動作を何回も繰り返しながら、どう動かすのか、どう踊らすのか、少しづつ習得していきます。

 

その過程を繰り返すことで、すぐに手に入れる事が出来ない事があることを、実感を持って学ぶことができます。と、同時に根気強く一つの事に取り込む力と集中力を鍛えていけます。そんな努力が成果につながったときの達成感は、自分を支える大きな自信になるのではないでしょうか。

 

また、真剣に取り組めば取り組むだけ、自分ができないと感じたり、苦しい思いをすることもあるでしょう。程度問題はありますが、そういった経験も人として成長するために、大切なことだと思います。

 

バレエは自分の身体を材料にして、感情を表現する芸術です。自分ではコントロールしきれない、感情やストレスをぶつけて表現することが出来ます。自己表現の方法の一つとして持つことが出来るものです。そしてその表現を洗練させるために、身体を訓練していきます。その過程の中で学べたことは、たとえプロのダンサーにならなかったとしても、その後の人生を支える大切な経験にすることが出来ると思います。そして、楽しみとして、ストレス発散として、ずっと続けることが出来るものでもあると思うのです。

 

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